代理店プロジェクト

【大手損保が「代理店委託契約書」の不適切な条文を是正】

〈「信頼」条項を削除〉
損保各社は、今年 4 月 1日、相次いで委託契約書を改定することとしました。
大手損保会社には「何時でも本契約を解除することができる」の項目に「信頼」条項が入っています。
例えば、東京海上日動の委託契約書には次の条文があります。

「当社(筆者註:保険会社)と甲(註;代理店)との間の信頼関係が、著しく損なわれた場合」、「何時でも本契約を解除することができる」

すなわち、損保会社が信頼関係を失ったと勝手に判断して、いつでも契約を解除できるという条項です。大手損保では、代理店の乗合を拒否するための脅しに使ったり、乗合を強行した場合にこの条項を盾にして一方的に契約解除を行ったりしてきました。

〈三井住友海上「格付け」の文言を削除〉
また、三井住友海上の「委託契約書」第 8 条には次のような文言があります。

「会社は、代理店の実態に応じ、別に定めるところに従って、代理店の格付その他の代理店区分等(以下「代理店の格付等」という。)を決定する」

代理店の「格付」、これほど損保会社と代理店との関係を見事に表す言葉はありません。この文言も今回削除されました。

〈この間の運動の大きな成果〉
これらの問題は、2017 年から開催してきた「損保代理店問題を考える」院内(国会内)集会で取り上げ、是正を求めてきました。また参議院財政金融委員会で、大門実紀史議員が、優越的地位の濫用に該当するものだときびしく指摘してきました。
その結果としての今回の改定です。しかし大手損保は、まるで打合せたかのように「分かりやすさ向上の観点」から簡素化・統合したものだと説明し、条文が不適切だったとは一言も述べていません。
唯一、共栄火災だけが「即時解除事由の一部削除」の理由として次のように記載しています。

「代理店へ強制乗合を理由に即時解除を行う保険会社があるとして(当社において実態は確認されていません)、国会で問題になっている背景を鑑み、代理店から『保険会社の優越的地位の濫用』と解釈されるおそれがある『信頼関係の喪失』の条項を誤って使用するリスク防止の観点から削除します」

共栄火災が明確に述べているように、今回の改定は、この間の運動と国会の質疑を受けてのものであり大きな前進です。

〈「優越的地位の濫用」の抜本的な是正を〉
しかし、問題は一部の不適切な文言だけではありません。委託契約書の別途規定である手数料ポイントの一方的な変更も、独禁法に違反する「優越的地位の濫用」であり、損保会社の姿勢そのものを問い直す必要があります。

松浦 章